ギネス認定「鉄道全9649駅下車」が本に(毎日新聞、9月12日):国内鉄道全駅下車を達成した会社員の手記が出版されるというニュース。出版云々はさておき、私は全駅下車ではなく全駅乗降を最終目標にしていますが、こういう楽しみ方もあるんだなと思うものの、ちょっともったいないな、と思った面もあります。
国内の鉄道を完乗された方はいくらもおいでですし、私がその次に実行した“最長片道切符の旅”も(少なくとも当時は)マイナーながら先達もおられましたが、これらを通じて、日本のなかで鉄道が通っているあらゆるところへ足を運んできました。しかし、そのプロセスにおいて、鉄道というものを使う過程で見えてくるもの、そして見たいものが、大きく替わっていきました。私にとっては、駅というものは鉄道という線を構成するための要素であるとともに、いなそれ以上に、鉄道という線とその外部――社会とも市民とも生活ともつかぬ雑多なファクターもろもろ――を接続するインタフェースです。そういうこともあって、降りて乗ってを繰り返すだけではなく、そこに降りた、乗ったということを契機に得られるものを、貪欲に吸収していきたいものです。要は、降りたら、歩いて、見て、食べて、そういった感覚と記憶の刺激を存分に浴びるべく、いろいろなものに触れていくつもりです。駅の乗り降りはあくまでもその契機として考えており(以前はこれ自体の優先度がもっと高かったのは確かです)、全駅乗降というものは「生きているうちにできるかどうかわからない」程度に考えています。
もっとも、小児のごとき好奇心を維持できるはずもなく、したがって、慣れぬ地において向けるアンテナの向きも全方位とはならず、ある程度方向は絞られざるをえません。実際、「駅の写真館」の「周辺のみどころ」にて取り上げている項目にも少なからず偏りがあるでしょう(自覚はあまりないのですが)。それでも、自分の興味関心の範囲というものを、多様な異要素の融合なき混淆を経ることによって、少しずつでも拡大してきたい、そう思います。