雑記帳


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12月28日(金)
“まるごと文化財”という視点

 若桜鉄道を登録有形文化財に登録申請へ(MSN産経ニュース、12月27日):「鉄道」の定義はいろいろ考えられますが、そもそも有体物であるか無体物であるかさえ判然としないものです。こういったものを「文化財」としてとらえるとはいかに、と思って記事に目を通すと、鉄道施設を一体化して登録申請するということのもよう。見出しには、それを読むだけで内容を正確に把握させる必要はなく、本文記事へいかにリードするかという面もありますが、だからといって意味の通じない表現を使ってよいものでもないでしょう。特にひねった表現を使ったわけでもないので、もう少し慎重にことばを使ってほしいのですが。

 それはさておき、こういった“一体化したセット全体”を文化的な遺産としてとらえる動きは、近年少しずつ広がりを見せていますが、それでも保存や活用の歴史が浅い産業文化財の分野では、まだまだ個別の専門分野ごとに重要性が判断されるのが通常です。しかし、産業文化財と判断される対象物は単独で評価するよりも、むしろ近代化されたシステムの中で複数のファクターが有機的に関係づけられる点に注目すべきです。鉄道の場合、駅舎や機関庫という「建築」、橋梁や隧道という「土木」、車両という「輸送用機械」などと専門分野単位で分割して評価することももちろん重要ですが、それらが実際に運行されている現場が残っていることの貴重さを再評価する時期にきているといえましょう。

 表題の若桜鉄道は、ご多分に漏れず近年存廃問題が浮上しています。島根県の一畑電車などとともに、来年にでも再訪したいと考え中。

12月24日(月)
品川と新横浜に全新幹線が停車

 来春の全国ダイヤ改正内容がJR各社から発表されました。

 今回の改正では、東海道新幹線のダイヤが大きく変わった点が特筆されましょう。N700系の増発というのはたいして関心を持ったものではないのですが、品川と新横浜にすべての新幹線を停車させるというのは、これまでの東海道新幹線のダイヤ思想を根本から変えるものという気がします。主要ターミナルに停車駅を絞り込むことによって、速達性のほかに「不要な駅に停まらない」ことを乗客へのサービスとしてきたのが、かつての「ひかり」であり、今までの「のぞみ」だったといえます。ところが今回は、東京側のターミナルを事実上分散させ、速達感を多少損ねても利便性を優先させるというもの。もっとも、所要時間についてはかなり厳しいものとなりそうで、実際のダイヤグラムは余裕が少ないキツキツのものになるのではないかという懸念もありますが。ここ最近、東海道新幹線では車両面以外での動きがあまりなかっただけに、今回のダイヤ改正はかなりの衝撃でした。

 このほか、寝台列車「なは」「あかつき」「銀河」の廃止も正式に発表されました。前2者はともかく、「銀河」はこれまでも何度も(とはいっても、1~2年に1回程度ですが)利用してきただけに、移動の選択肢がひとつ減ったことが残念に思えます。夜行路線バスなどがこれだけ充実してくれば需要の減退は否定できず、さりとて寝台の需要を喚起しようにも「サンライズ」で大きな成果がなかったという負の実績もあり、やむを得ないとみるべきでしょう。列車本体もさることながら、「銀河」という美しい名称が消えるのも寂しいのですが、かといって今さら昼行列車に使える列車名でもないでしょうし、このまま永久欠番状態でしょうか。

12月23日(日)
「鉄道風景&名所800

 今月発売の月刊誌『鉄道ピクトリアル』(電気車研究会)が、創刊800号を記念して「鉄道風景&名所800」と称する特別企画を行っています。鉄道車両史を中心とした記事に強い同誌ですが、こういった旅好き向けの企画を89ページにもわたって掲載しています。もっとも、トピックを800に絞り込むのもなかなかたいへんだったようで、選定にもややアンバランスさがあるものの「これを取り上げるとはすごい!」「あのポイントを説明してほしいな」などと思いながら、会社帰りの電車の中で読みふけってしまいました。

 弊サイトにおける2大コンテンツの1つともなっている駅については、「駅めぐり」という大項目が設けられ、129のトピックが載っているほか、「運転施設・設備、線路配線」にはJR御茶ノ水駅や阪急淡路駅なども掲載されています。ひとつあたりのトピックは100~200字程度と短いものの、署名入りで主観もまじえた記事は楽しさ満載、この雑誌と地図を片手にすぐにも現地に飛びたくなってしまいます。

 ただし、用語の用法が不適切なものや事実誤認がまま見られるのが残念。例えば「登録有形文化財に指定」という記述が少なくとも3者により3個所になされており、うち1個所では文化庁の登録有形文化財の指定を受けた(同誌47ページ)とあります。しかし、登録対象となる有形文化財は、国および地方公共団体から文化財指定を受けていないものに限定されており(文化財保護法第59条第1項および第2項)、「登録」はあくまでも「指定」でカバーできない範囲をフォローするために行われる処分であって、明確に異なります。また、有形文化財を文化財登録原簿に登録できるのは文部科学大臣であって、文化庁長官には管理や公開に関する権限があるにとどまります。

 これだけの数のトピックを集めて整理するという編集作業は並大抵のものではなく、執筆内容の確認にさける時間とマンパワーに限りがあったこともよくわかりますが、2007年末という一時点におけるトピック集そのものも時代を下れば史料性をもってくるわけで(一時史料になりえるものではありませんが)、販売価格を200円程度上げても記事の精度を上げてほしかったと思うのは贅沢な要求でしょうか。

 なお、個人的に取り上げてほしかった駅関係のトピックとしては、武田尾駅(谷を越えるとすぐトンネル!)、綾瀬駅(営業上の珍奇な取り扱いは理解に時間がかかる)、永平寺口駅(白亜の端正なミニ木造駅舎)、電鉄魚津駅(往年の栄華が…)、信濃玉川駅跡、といったところでしょうか。うしろのほうにくると相当にマニアックになってしまいますが…。

12月10日(月)
ぼちぼち更新再開

 先月にトラブルを起こしていくつかのデータを飛ばしてしまったことに加え、その後公私ともにいろいろとあったために更新作業どころではなく、夏にあちこちまわったときの写真もろくに処理していないというありさまでしたが、なんとか更新再開のめどが立ちました。このため、当初の予定どおり、私鉄各駅を中心にアップロードをぼちぼちはじめていく予定です。



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