参道に出現する前衛的な駅舎

出雲大社前

いずもたいしゃまえ Izumotaishamae
出雲大社前駅
▲出雲大社前駅駅舎《2010年12月11日撮影》

 

出雲大社前駅ホーム
【写真1】出雲大社前駅ホーム。《2010年12月11日撮影》

大社線の終着駅で、出雲大社の参拝拠点です。出雲大社の正式名称は「いずもおおやしろ」ですが、この駅は通称を採り「いずもたいしゃまえ」という呼称になっています。

終着駅らしく頭端式になっており、現在では島式ホーム1面2線が使われています。南側の側線には、現在では引退した旧型電車が休んでおり、日中は車内を見学することが可能です(改札内なので、乗車券類または入場券が必要)。

ホーム上屋を支える支柱に多用されている古レールがなんとも壮観で、エッフェル塔のような均整の取れたカーブにはみごたえがあります。

 

出雲大社前駅改札口をラッチ内から望む
【写真2】出雲大社前駅改札口をラッチ内から望む。荷物運送用の秤が置かれています。《2010年12月11日撮影》

改札口は正面右手にあり、列車の到着時に駅員が出迎えます。改札口の脇には大きな秤がありますが、これは小荷物運送の際に利用するものです。現在でも小荷物運送を行っている一畑電車ならではの装備ですが、さすがに出番はそう多くはないようです。

このほか正面左側には、駅舎外へ直接通じる臨時改札口がありますが、現在ではまったく使われていないようです。

 

出雲大社前駅改札口を改札外より望む
【写真3】出雲大社前駅改札口を改札外より望む。手動式の発車案内表示があります。《2010年12月11日撮影》

改札口を通って駅舎の中に入ると、地方私鉄である一畑電車が総力をあげてつくったことがうかがえる、凝ったつくりのものになっています。

改札口のまわりには、出札窓口のほかに荷物一時預かりの窓口があります。また、改札口の上には手動式の案内表示器(雲州平田にも同様のものあり)が設置されています。列車が発車すると、駅員が棒状の器具を用いて取っ手を回転させ、次の便の時刻を表示します。

 

待合室内部を改札口前より望む
【写真4】待合室内部を改札口前より望む。ドーム状の天井に明かり取りから入る光が映えます。《2010年12月11日撮影》

改札を出て上を見上げると、高いヴォールト天井とステンドグラスが目に入ります。特に、駅正面上側にあるステンドグラスから光が入ると、なんともいえない幻想的な雰囲気を醸し出すので、電車で出雲大社前駅に訪れる際には、午後から夕方にかけての時間帯がよいでしょう。なお、駅は西側が正面なので、駅舎正面の写真を撮る場合にも夕方が順光になります。

頭上を二方向に放物線上の曲線が踊り、さらに壁面にも曲線が動きます。さらに、天井が高いにもかかわらず柱がまったくないため、ゆったりしたスペースになっています。そのいっぽうで、ステンドグラスがあるものの壁面には窓ガラスがないため、いささか薄暗くなっています。こんななかで列車を待っていると、どこか懐かしいような、はたまた荘厳な空間にいるような、ちょっと不思議な感覚を味わえます。

 

待合室内部を改札口の反対側から望む
【写真5】待合室内部を改札口の反対側から望む。中央の円筒形の部分がかつての切符売り場でした。《2010年12月11日撮影》

駅舎のなかほどには、円筒形にぽっかりと突き出したようなスペースがあります。ここはかつて切符売り場として利用されていたスペースで、ガラス窓の下側に手が入る程度のすき間を設けるという、かつて鉄道の切符売り場でしばしば見られた形が取られていました。中央に切符売り場、左側にホーム入口(通常の改札口)、右側屋外に出口(臨時改札口)という構図になっています。これは先につくられた国鉄の2代目大社駅(1924年)とも共通していますが、偶然の一致なのか意識した結果なのか、気になるところではあります。

改札口の前のスペースは観光案内所として活用されており、待合室には多くのベンチが置かれています。

 

駅舎を南側から望む
【写真6】駅舎を南側から望む。横から見ると、特異な造形がよりわかります。《2010年12月11日撮影》

駅舎の外に出ると、ドーム状の屋根の上には瓦がびっしりと敷き詰められており、爬虫類のウロコを連想させます。この不思議な駅舎の設計者や完成年は不明なのですが、当初は分離派の、のちには茶室研究で知られた建築家、堀口捨己が手がけた話題作「平和記念東京博覧会 動力・機械館」(1922年、現存せず)と非常によく似ています。堀口の作品にインスパイアされた建築家が設計したものと思われ、ドイツ表現主義の影響が色濃かった大正末から昭和初期にかけて、一種のムーヴメントを受けた結果なのでしょう。

出雲大社前駅は、出雲大社大鳥居まで6分ほどの距離にあります。“前”という名称が妥当かどうか微妙な距離ですが、参拝するのに抵抗のない好立地といえましょう。立地条件では、かつて町外れに設けられていたJR大社駅に比べてはるかによく、実用性もあるといえます。もっとも、観光客の利用に結びつくかどうかは、なかなか微妙でありますが。

停車列車

確認中。

乗り場

南側から順に、1番線、2番線となります。

  • 1-2.大社線上り 川跡方面

駅名の由来

特記事項なし。

歴史

詳細は確認中。

1930年2月2日
一畑電気鉄道によって川跡-大社神門(現、出雲大社前)間が開通し、「大社神門」駅として開業。
1970年10月1日
駅名を「出雲大社前」に変更。

周辺の見どころ

出雲大社

駅から北へ、徒歩8分。旧暦10月中旬の神在月(一般的な神無月)には全国から八百万の神々が集まり神議が行われる場所とされ、二拝四拍手一拝という独自の作法で礼拝を行います。国譲りの際に造営された宮殿がその起こりとされ、このためほかの神社とは歴史、格式等について一線を画しており、戦前には公式に“大社”を名乗ることができた唯一の神社でした(三嶋、諏訪、日吉、春日などは戦後に名乗っています)。かつての本殿はその高さ32丈(100m弱)あったといい、このため建てられては倒壊を繰り返したとか。現在での本殿も十分に大きいものですが、一般人はもちろん皇室といえども中には入れない聖域となっています。社殿が西側を向く「大社造」になっており、巨大なしめ縄も大きな特徴のひとつ。また、縁結びの神としても知られています。拝観自由。 [Google Map] [Mapion]

【WebSite】http://www.izumooyashiro.or.jp/

古代出雲歴史博物館【未訪】

駅から北へ、徒歩10分。コメント準備中。 [Google Map] [Mapion]

【WebSite】http://www.izm.ed.jp/

奉納山公園

駅から北西へ、徒歩18分。西側に広がる稲佐の浜を一望できる公園で、国譲りの神話を思い起こしながら眺める夕日はみごと。出雲阿国の碑があります。夏は蚊がすさまじいので要対策。園内自由。 [Google Map] [Mapion]

日御碕

駅から一畑バスで20分、終点下車。“東洋一の灯台”とうたわれた日御碕灯台、素戔嗚尊と天照大神を祀る日御碕神社があります。海岸沿いの遊歩道を歩くと、岩に波しぶきがあたるさまが見えます。沖にある経島はウミネコの繁殖地で、みゃーみゃーという鳴き声が賑やか。 [Google Map] [Mapion]

旧大社駅

駅から南へ、徒歩10分。1990年3月かぎりで廃止された旧JR大社線の終着駅だった大社駅構内の駅舎とホームが、現役当時のまま残されています。駅舎内およびホーム見学無料。駅本屋は国指定重要文化財。駅舎、歴史および現役当時の情報は別ページを参照のこと。 [Google Map] [Mapion]

その他

  • 駅舎は、国の登録有形文化財
  • 経済産業省、出雲大社前駅を「近代化産業遺産群 続33」を構成する産業遺産として認定。[2009年2月6日発表]

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