特急と貨物は室蘭本線へ
函館本線と室蘭本線の分岐駅です。
函館方面から、海岸沿いに比較的ゆったりした海岸線沿いを通ってきた函館本線は、ここからニセコ方面への山岳地帯へと入っていきます。長万部以北の函館本線沿線は、決して無人地帯というわけではありませんが、地形の都合上線形が悪く、このため特急列車や貨物列車は、基本的に海沿いの室蘭本線方面へ向かいます。
函館本線長万部以北は事実上ローカル線と化していますが、有珠山の噴火によって室蘭本線が長期にわたり不通となった際には、迂回路として大活躍したこともあります。なお、分岐点となっているのは鉄道だけではなく、やはりニセコ方面に向かう国道5号線と、豊浦や伊達方面へ向かう国道37号線の分岐点にもなっています。
普通列車の発着はやや不規則
運転上の要衝であることから構内は非常に広く、多くの列車が待機できるスペースが現在も確保されています。
島式ホーム2面4線から成り、このうち駅本屋側(東側)の1面2線が特急、西側の1面2線が普通列車用になっています。普通列車の発着番線はやや不規則で、【写真2】のように同一ホームの前後に異なる方向へ向かう列車が止まることもあります。なお、普通列車はすべての便がここ長万部を起終点としており、東室蘭方面、小樽方面、函館方面への各便とも始発列車となります。
特急列車の発着は単純
一方の特急列車は単純な左側進行で、下り列車が2番ホーム発着、上り列車が1番ホーム発着となっています。ホームそのものも普通列車用のホームより長くなっています。
跨線橋の案内が派手な色使いに
各ホームおよび東側にある駅本屋との間は屋根付きの跨線橋で連絡していますが、普通列車用ホームからこの跨線橋の階段を見ると、3色を使って、日本語、英語、中国語繁体字での案内がなされていました。これだけの色を使うと、いささか目の毒ではあります。
跨線橋内の案内も懇切丁寧
跨線橋に上った先にも案内掲示が豊富で、これだけ出せば、目的地に向かう列車で迷うことはないだろうと思わせるものです。普通列車はともかく特急列車の発着は比較的単純なのですが、ここまで親切な案内をしている駅はあまり見ない気がします。
なお、エレベータ等のバリアフリー設備はなく、列車の乗り降り(普通列車相互の乗り継ぎを除く)には必ず階段の昇降を伴います。
改札口は少し北側に
駅本屋は跨線橋をわたった東側にあるため、跨線橋から階段を地平に降り、少し北側に進んだところに改札口が設けられています。
改札口と跨線橋の間の通路は立派
この改札口と跨線橋の間の通路はずいぶん立派なもので、太い木を使ったさんが威容を見せています。通路の幅自体もかなり広くなっていますが、それだけの利用者がいたということでしょうか。
改札口はコンパクト
肝心の改札口は窓口ひとつだけのコンパクトなもので、保温用の自動ドアが設置されていることもあって、多くの人を短時間でさばくことはあまり考えられていないようです。北海道らしく、列車別改札が行われています。
改札口と出札窓口は一応別になっていますが、中ではつながっているため、基本的には一人で同時に担当しているようです。窓口の脇には、各種パンフレットが取りそろえられていました。
キヨスクの商品は種類が豊富
出札窓口の向かいにはキヨスクがあり、店舗自体はごくコンパクトなものですが、そろえている商品の種類が非常に豊富で、土産物などもかなりの数を並べていました。
キヨスクの右手は、かつてはスーパーが営業していましたが、現在では閉店しており、観光案内所が入居しています。
待合室はコンパクト
出札窓口の正面左手が待合室になっていますが、駅の規模に比べるとずいぶん小さくなっています。このため、待合室の脇や改札口の脇にも椅子が置かれており、利用者の便を図っています。コンコースとの仕切りなどは特に設けられていませんが、玄関が二重になっているため、冬季でも寒さは感じません。
駅前には大きなロータリー
駅舎は横に長い平屋のもので、三角屋根のペディメントに半円の切り込みがいいアクセントとなっています。壁面はかつては白色でしたが、その後濃いクリーム色に塗り直されています。
駅前には大きなロータリー
駅前は大きなロータリーになっており、路線バスのほかタクシーが常駐していました。
北海道新幹線の掲示も
私が訪れた2016年1月には、北海道新幹線新函館北斗開業直前というタイミングだったこともあって、新幹線車両をモチーフとしたモニュメントが掲示されていました。長万部にも新幹線駅が設置されることもあって、地元の期待も高いようです。
中心街には各種商店が
駅前を通る「本町通」沿いが長万部の中心街となっており、各種個人商店がびっしりと並んでいます。これまでは小集落の中に商店がぽつぽつ建つのみという光景が続いてきただけに、久々に町らしい風景を目にする気になります。飲食店のバラエティもあり、昼間であれば食事にも苦労はないでしょう。
長万部駅の駅弁として名高い「かにめし」を製造販売している「かなや」もここにあります。
駅の北側に跨線橋
この本町通と線路の間の細い道路を3分ほど進むと、「←温泉近道」という看板が現れ、その左側に跨線橋があります。この跨線橋を渡ると駅の西側に出ることができ、渡った先には長万部温泉の旅館街が広がっています。この跨線橋は冬季でもきれいに除雪されており、通行には何ら支障はありません。
跨線橋からは駅を一望
この跨線橋の上から南側を見ると、長万部駅の構内を一望できます。中望遠レンズがあれば長万部駅を発車する、または到着する列車を捕捉することが確実にできます。なお、跨線橋はあまり広くはないので、通行人の往来の邪魔にならないように注意しましょう。
駅の東側には更地になっている土地が広がっていますが、ここは北海道新幹線開業時に駅となる予定地です。新幹線開業後も室蘭本線はJR北海道が経営を続けるため、現在の長万部駅ホームはおそらく大きく変わることはないでしょうが、現在の駅舎や跨線橋は大きく姿を変えます。
北側を向くと線路が分かれる
一方、跨線橋から北側を見ると、左側へ函館本線が、右側へ室蘭本線が分かれていくのが見えます。駅構内が広いこともあり、ディーゼルカーが側線上を転線しながら行ったり来たりを繰り返すさまを見ることもできます。
長万部町の計画によると、新駅舎は2階に改札口を設け、3階が新幹線ホーム、1階が在来線ホームとなり、幅8メートルの自由通路から東西に出口と駅前広場を整備するとのことで、特に西口は大きく変貌を遂げそうです[1]。
停車列車 [2015年12月現在]
全列車が停車します。なお、長万部を挟んで函館・森方面と、倶知安・小樽方面および伊達紋別・東室蘭方面を直通する普通列車はありません。本稿では普通列車については省略します。
- 特急「北斗」「スーパー北斗」八雲 ← 長万部 → 洞爺
東側(駅本屋側)から順に、1番線、2番線、3番線、4番線となります。
駅名の由来
当て字の多い北海道の地名の中でも、発音しやすいせいか妙に耳に残りやすい駅名です。由来はアイヌ語の「オ・シャマンベ」(「カレイがいるところ」の意)。
歴史
詳細は確認中。
- 1903年11月3日
- 北海道鉄道によって森-熱郛間が開業した際、長万部駅開業。
- 1907年7月1日
- 北海道鉄道の国有化に伴い、官設鉄道(逓信省帝国鉄道庁)の駅となります。
- 1923年12月10日
- 長万部-静狩駅が開業、函館本線と長輪線(現、室蘭本線)の分岐駅となります。
- 1984年1月31日
- この日かぎりで貨物営業廃止。
- 1987年4月1日
- 国鉄の分割民営化に伴い、JR北海道の駅となります。
- 2018年9月6日
- 北海道胆振東部地震に伴い、函館本線および室蘭本線を含むJR北海道全線が運休(函館本線・新函館北斗-長万部間および室蘭本線・長万部-沼ノ端間は9日に運転再開)。
- 2018年9月15日
- 函館本線・長万部-倶知安間が復旧、運転再開。
周辺の見どころ
長万部温泉
駅西側、駅北の跨線橋経由で徒歩6分。天然ガスの試掘に際して1955年に発見された温泉で、高張性弱アルカリ高温泉、やや塩分が高め。駅近くに複数の温泉旅館が並び、日帰り入浴可能なところも多いため、列車を乗り継ぐ際に空き時間で一風呂浴びることも可能です。
【Link】長万部温泉利用協同組合公式Webページ
【Map】OpenStreetMap / Google Map / Mapion