信州中野から連続する上り坂をのぼってきた長野線の電車は、夜間瀬川が形成した谷の入口付近にあたる湯田中で終着駅となります。湯田中駅の手前では40‰にもおよぶ急勾配で、地味ながら山岳路線といえましょう。
駅舎は温泉街の玄関口らしく存在感ある堂々たるもので、鉄筋コンクリート造り一部2階建てです(中央コンコース部分は吹き抜けになっており2階はありません)。広い間口には逆三角形の玄関支柱と大きな庇が温泉客を出迎え、中にはいると高い天井に明かり取りからの自然光を利用した空間が広がっており、決して余裕のあるスペースではないにもかかわらず開放的な印象を与えます。もっとも、コンコースのキャパシティ自体は非常にかぎられたもので、また列車別改札が行われているため、特急列車の改札が始まる際には改札口に長蛇の列ができます。自動券売機が設置されています。
駅舎の脇には観光案内所や長電バスの営業所が入っています。
かつては2つのホームを備えた2面2線で、このうち1面はホームそのものは3両対応であるものの、本線から列車が直接入れる部分は2両分しかスペースがないため、3両編成の列車(基本的には特急)に限ってスイッチバックを行うという変則的な終着駅でした。小田急ロマンスカー10000系を譲受するにあたりこのスイッチバックがネックとなったことから、2006年9月に大改造工事が行われ、現在では本線からの列車がすべて駅本屋前のホームにすんなり入れるようになった一方、駅本屋と反対側の線およびホームは廃止され、1面1線となっています。留置線などもないため、列車は到着したらすぐに折り返すという単純な運用になっています。旧ホームはそのまま存置されていますが、レールは残っていません。
ホームはカーブおよび傾斜地上に設けられていますが、ここまでの区間が急勾配だったため、傾斜地に見えないのはおもしろいところ。ホーム全体に屋根が設けられています。
現在の駅舎もなかなかに貫禄あるものですが、ホームの反対側にはそれ以前に使われていた旧駅舎が残っており(国の登録有形文化財)、観光案内所および休憩所として活用されています。改修が行われたことに加えて自治体による管理が行き届いているため、現役の湯田中駅よりもきれいなのはなんとも皮肉な話。旧駅舎の隣には入浴施設「楓の湯」があり気軽に入浴できるほか、旧駅舎前には無料で利用できる足湯も設けられています。
駅前は非常に広いスペースが確保されており、タクシーの営業所があります。湯田中温泉の玄関口ですが駅前はやや寂しい印象があり(前述の旧駅舎前のほうがよほど好印象を与えます)、観光客を誘導するための整備が望まれます。駅前から少し外れると温泉街ならではの雰囲気に触れることができます。
湯田中という地名は、湯治に訪れた小林一茶が田中河原といふ所ハ、田のくろ、ある(い)ハ石の陰より、め(で)たき湯の福々と出て、たゞいたづらに流れちりぬ
と詠んだことに由来するといわれています[1]。もっとも湯田中温泉ははるか以前からの古い温泉であり、検証が必要でしょう。
河東鉄道が信州中野から湯田中まで路線を延長した際に、終着駅として設置された駅です。
コメント準備中。
2003年5月30日
2007年10月5日、写真を差し替えおよび追加のうえ加筆修正
ご意見、ご感想などは、脇坂健までお願いいたします。
Copyright ©1999-2008 Wakisaka Ken. All Rights Reserved.