瀟洒な駅舎はボロボロに

中塩田
なかしおだ
Nakashioda

中塩田駅

 下之郷を出て西にカーブした別所線は、田園地帯を進み、人家が建て込んできたところで中塩田駅に到着します。

 中塩田には、木造の古い洋館風の駅舎が残っています。終点である別所温泉とほぼ同じデザインですが(中塩田のほうが少し小さいか)、塗装の変更などもないようで、よりオリジナルに近い状態をとどめています。温泉への観光客を見込んだ別所温泉とは異なり、さしたる観光資源もない中塩田にこれだけの駅舎が作られたのはなぜか、よくわかりません。

 しかし、駅舎はかなり荒れています。ツタが絡まっているのはアクセントとしてプラスになるとしても、モルタルが剥がれ落ちて板が丸出しになっていたり、ガラス窓が割れて待合室に風が吹き込んだりしています。もとのつくりがしっかりしているからこそ、これほど荒れても大丈夫なのでしょうが、このままでは、“荒れた駅”が“朽ちた駅”へと転じるのも、時間の問題のような気がします。

 玄関の上には、上田丸子電鉄時代の社章が見られます。丸子方面の路線がなくなったとはいえ、「上田電鉄」の社名が復活したことを、この駅はどう見ているのでしょうか。

玄関上の軒

軒の上には、上田丸子電鉄時代の社章が残っています。ローマ字表記された駅名にも注目。《2005年11月6日撮影》

 待合室と接して駅事務室があり、ホームとの接点部分に改札という構図は、古典的な駅ではほぼ普遍的に見られるものです。中塩田駅も例外ではありませんが、この駅には、駅舎の外にも改札があります。これは、団体利用が多かったり波動需要が見られたりする駅に多いのですが、中塩田はやはりこれらにはあてはまりません。

中塩田駅待合室外改札

待合室内の改札のほか、駅本屋外にも改札があります。《2005年11月6日撮影》

 中塩田駅は無人化されてから久しく、ホームへの出入りの際には待合室を通る必要はありませんが、やはり列車を待つ間は待合室にいるのが自然でしょう。しかし、駅舎の外観を見ると、中に入ってよいものだろうか、という気になります。

 ところが、いざ待合室の中に入ると、建物そのものの荒れ具合が嘘のように、きれいに片づけられています。

中塩田駅待合室

駅本屋構造物自体の荒れ具合とはうってかわって、待合室の中はきれいに整理されています。《2005年11月6日撮影》

 地元の人の寄附によると思われる座布団があるほか、ぬいぐるみがたくさん置かれています。ホウキとチリトリがさりげなく置かれているのは、利用者の自発的な清掃活動に期待してのことかもしれません。確かに、上の写真のような置かれかたをすると、手に取りたくなるから不思議なものです。

中塩田駅改札

メイン改札部分には、かつてのローカル線に備わっていたものがすべて揃っています。《2005年11月6日撮影》

 列車を降りて最初に眼にするのが、木のラッチ、木枠のガラス窓、青い琺瑯引きの駅名標と、タイムスリップしたような感覚になる小道具がずらりと並びます。ホームそのものはアスファルトが再舗装されてきれいになっていますが、それ以外は駅舎が竣工してからまったく変わっていないようです。

中塩田駅ホーム

かつては対向式ホームを備えていましたが、現在では側線を作業用車が占拠しています。《2005年11月6日撮影》

 もともと2面2線で、対向式ホームとの間はホーム中ほどの構内通路で連絡していました(現在も名残があります)。しかし、現在は本屋と反対側のホームは廃止され、交換設備も撤去されています。現在は側線として活用されており、作業用車が留置されています。

 これだけ立派な駅舎が、農村地帯の真ん中に設けられた積極的な理由は、さっぱりわかりません。別所温泉とたまたま同時期に駅舎を作ることになったため、設計図を流用したという程度の推測しかできませんが、なんとも不思議な駅ではあります。

 駅の周辺は、静かな農村となっています。別所線はこの先、道路と平行して柵などがほとんどないところを走りますが、このように路面電車的な光景が見られる路線は、別所線以外では熊本電気鉄道ぐらいになってしまいました。

駅名の由来

 確認中。

歴史

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周辺の見どころ

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(駅周辺には郵便局なし)

2005年11月19日

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