線路の向きを大きく変えて終着駅へ
南阿蘇鉄道は、見晴台の先で向きをぐいっと北に向け、沿線で最大の町である高森町に到着します。
南阿蘇鉄道は、見晴台の先で向きをぐいっと北に向け、沿線で最大の町である高森町に到着します。
終着駅の高森は、南阿蘇鉄道としても最大の駅です。ホームそのものは駅本屋前の1面のみですが、構内には車両基地があり、レールバスやトロッコ列車などが多数休んでいます。
ホームは比較的長めで、立野方ではカーブから続いていることもあって、少し弧を描いています。ホーム上にはベンチが多く置かれているほか、観光客を意識したのぼりが多数はためいていました。
駅舎は八角形の時計台を持っており、山小屋のような教会のような、摩訶不思議ながら楽しい外観です。中に入ると、中央部時計台の下は明かり採りからの光が天井から穏やかに注ぎ、木の暖かい雰囲気をよく出しています。
有人駅で、南阿蘇鉄道の乗車券類を販売していますが、むしろ駅舎内は土産物の販売スペースのほうが多く、売店としても機能しています。
駅前には名産品展示施設などが建っており、駐車場が整備されているほか、C12 241が静態保存されていました。晩年は鹿児島や熊本などで活躍した機関車です。
駅前には民家が密集しているほか、商店もぽつぽつ建っています。観光客を意識している店舗もあれば、昔からあまり変わらずに地元客のみを相手にしている店舗もあり、南阿蘇鉄道沿線で随一の町らしい町の風景が見られます。
かつて鉄道建設が行われていた高千穂・延岡方面へ向かうバスは、駅から少し離れたバスターミナルより発車しています。
確認中。
路線開業当初からの駅です。
確認中。
◆ミニコラム◆ 未成線のトンネルが観光地に
南阿蘇鉄道の下り列車に乗り見晴台駅を出ると、ぐいっと左に向かいます。沿線最大の人口集積地である高森町の中心部がこの方面にあるからですが、かつては、このカーブを無視するように直進するルートで線路を延伸する工事が行われていました。これは、延岡から高千穂を経て高森にいたる国鉄高千穂線として計画されたもので、開通した暁には高森駅も新線上に移転する運びになっていました。ところが、このカーブの先で建設中の高森トンネルで異常出水が発生し、工事は中断。そうこうしているうちに、国鉄の新線建設そのものが全国でストップ。高森側では国鉄高森線が南阿蘇鉄道に、延岡側ではJR高千穂線が高千穂鉄道(のちに廃止)に転換されたものの、両者を結ぶ区間を引き受ける動きはなく、そのままうち捨てられてしまいました。
異常出水のあった高森トンネルは、現在「高森湧水公園」という名前の観光地に生まれ変わっています。未成線のトンネルが観光利用されているのは、全国的にも非常に珍しい例です。水が多く湧き出ていることをアピールしている南阿蘇地区ならではともいえましょう。