地域住民の温かみが伝わる駅

向山

むかいやま Mukaiyama
向山駅
▲向山駅駅舎《2016年6月26日撮影》

珍しい島式ホーム

向山駅ホームと階段
【写真1】向山駅ホームと階段。旧東北本線では珍しい、島式ホーム1面2線から成ります。《2011年11月20日撮影》

2006年に下田町と百石町が合併してできたおいらせ町にある2つの駅のうち、北側に位置しているのが、ここ向山です。

防雪林の役割を果たしていると思われる山林、広大な牧場などが近くに広がっており、山深くはないながら自然が豊富な印象を与えるという、車窓を眺めているとちょっと気にかかる一帯ではあります。

駅は島式ホーム1面2線という、東北本線では珍しい形態になっています。

防雪林に留置線

向山駅留置線
【写真2】向山駅留置線。《2011年11月20日撮影》

島式ホームの西側には防雪林がありますが、その手前に留置車用の車庫と控え室と思われる建物があります。

駅の外へは跨線橋で連絡

向山駅跨線橋出口
【写真3】向山駅跨線橋出口。《2011年11月20日撮影》

ホーム中ほどから跨線橋が東西に延びる形になっており、跨線橋に続く部分には上屋が設けられています。なお、青い森鉄道の列車はこの跨線橋から青森方に停車します。

跨線橋はなかなかの年代物

向山駅跨線橋(東側)
【写真4】向山駅跨線橋(東側)。《2011年11月20日撮影》

跨線橋はなかなかの年代物で、支柱となる鉄骨の組み方や壁面などに歴史を感じさせますが、窓枠はすべてサッシ化されているため、実際に使うぶんには古さを感じさせません。

西側にも跨線橋が

向山駅跨線橋(西側)
【写真5】向山駅跨線橋(西側)。《2016年6月26日撮影》

跨線橋の形状を見ると、もともとは駅本屋のある西側にのみ延びていたところ、東側からの乗降の便を図って後から西側へも延びたものと思われます。これを示すように、西側へ向かう通路は狭く、また足場などを見ても駅の利用面積が狭まってから使われるようになったことがうかがえます。

駅構内はかなり広く

向山駅跨線橋から青森方を望む
【写真6】向山駅跨線橋から青森方を望む。《2016年6月26日撮影》

跨線橋から下を見ると、島式ホームの西側には側線があるほか、かつてはさらに側線が設置されていたことがはっきりわかります。これだけ構内が広いのは不自然にも思えますが、かつてここからフジ製糖(現・フジ日本精糖)青森工場への専用線が伸びていたことから、その際に整備されたものでしょう。なお、この工場専用線の跡地は現在も痕跡をたどることができるといいます。

駅舎は機能的なつくり

向山駅跨線橋から目時方を望む
【写真7】向山駅跨線橋から目時方を望む。《2016年6月26日撮影》

西側にある駅舎は鉄骨造平屋建て、1960年代から70年代にかけて、貨物の取扱いを行う国鉄駅で標準的なスタイルとして採用された方形のものです。高度成長期特有の機能主義を全開にしたつくりですが、頑丈なつくりでもあり、まだまだ頑張れそうではあります。

事務室はミュージアムとして再生

「向山駅ミュージアム」入口
【写真8】「向山駅ミュージアム」入口。《2016年6月26日撮影》

完全な無人駅で、乗車券類の販売なども行われていません。また駅舎自体は標準的なものですが、駅舎の使われかたは非常にユニークなものです。

ここでは、かつての事務室部分を活用し、有人駅だった当時の備品や写真を活用した「向山駅ミュージアム」として転用されています。これは、地元の人が荒れ果てた無人駅を清掃するところから始まり、鉄道会社の協力も得ながらここまで整備していったというものです。

残された備品が生き返っています

【写真9】「向山駅ミュージアム」内部。現在は収蔵物も増え、レイアウトも変わっています。《2011年11月20日撮影》

駅をミニ博物館として利用するケース自体はいろいろありますが、それらの多くが、地方自治体や地方の教育委員会などが実施するもので、残された備品をガラスケースなどに入れて展示するもの。こぎれいではあっても温かみに欠けるという例がしばしば見られます。しかしここでは、使われていた生のものを並べるほか、当時の関係者などが直接協力することで、いわば“血の通った”展示になっている点が特筆できます。

また、有志によるジオラマもあり、鉄道模型が縦横に走ります。模型の持ち込みも可能とのことなので、興味があればスタッフへ声をかけるとよいでしょう。

人の手入れが行き届いています

向山駅待合室
【写真10】向山駅待合室。写真はイベント開催時のもので、通常とは配置などが異なると思われます。《2011年11月20日撮影》

待合室にある書棚には、たくさんの本が並んでおり、列車待ちをする場合にも退屈しません。また、この待合室自体が地元の集会場のような役割を担っているようで、いわば地域コミュニティの核として活用されています。駅としては無人化されて久しいのですが、地元の人が三々五々集まることで、温もりを伝える。どこでもできることかもしれませんが、実際にはなかなか見ることができない、そういう駅になっているようです。

ハコモノ整備のような感覚で駅を観光地に仕立て上げるのも方法として否定はしたくありませんが、人がいるから、心が安らぐ、そういう駅にめぐり逢えるとほっとするものです。

トイレは別棟で、小さい物が用意されています。

東側にも出口があります

向山駅東口
【写真11】向山駅東口。《2011年11月20日撮影》

いっぽうの駅東口は、跨線橋をおりるとすぐに道路になっています。道路は跨線橋の出口付近で少し膨らむ形になっており、自動車の送迎を考慮してはいるようですが、西側に駅舎があることに比べてアンバランスであることを考えると、無人化されたのちに跨線橋が東側へ延ばされたと考えるのが順当でしょう。なお、駅の南側には踏切がありますが、遮断機がなく自動車も通行不能なので、ご注意を。

駅前には民家や商店がぽつぽつ並んでいますが、旅行者にとっては、駅東口から南側に進むと到着するカワヨグリーン牧場が有名なところ。牧場見学のほかユースホステルも営業しており、東北本線沿線をまわったホステラーにはなじみの深い駅かもしれません。かくいう牧場の存在そのものは知ってはいたものの、私は40歳近くになるまでこの駅は素通りばかりでしたが。

停車列車 [2016年6月現在]

普通列車のみが停車し、快速は通過します。

乗り場

西側(駅本屋側)から順に、1番線、2番線となります。

  • 1.青い森鉄道線下り 野辺地、青森方面
  • 2.青い森鉄道線上り 八戸、目時方面

駅名の由来

未確認ですが、山を開墾して農牧場を展開していったことに由来するものでしょうか。

歴史

信号場が格上げされて開業した駅です。

1922年8月15日
下田-古間木(現、三沢)間に「木ノ下」信号場設置。
1936年7月10日
木ノ下信号場が駅に昇格、「向山」駅開業。旅客のみの取扱いでした。
1962年5月16日
貨物営業を開始。
1976年8月31日
この日限りで貨物営業廃止。
1987年4月1日
国鉄の分割民営化に伴い、JR東日本の駅となります。
2010年12月4日
東北新幹線新青森開業に伴い、JR東日本の八戸-青森間が青い森鉄道に移管され、同社の駅となります。
2011年10月16日
「向山駅ミニミュージアム」オープン。

周辺の見どころ

向山駅ミュージアム

駅舎内、土日祝日のみ開館、見学無料。2011年10月16日オープン。詳細は本文の記述をご覧ください。

カワヨグリーン牧場

駅東口より南へ、徒歩10分。コメント準備中。

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