東北の白象と呼ばれた白亜の駅舎が残る

陸奥市川

むついちかわ Mutsuichikawa
陸奥市川駅
▲陸奥市川駅駅舎《2012年11月18日撮影》

広い構内を残す

陸奥市川駅構内を跨線橋より望む
【写真1】陸奥市川駅構内を跨線橋より望む。配線が単純な割にずいぶんと幅広です。《2012年11月18日撮影》

八戸市北部に位置する陸奥市川駅は、今でこそひっそりとした無人駅ですが、その割になかなか立派な設備を備えている駅でもあります。この駅には不思議な魅力があり、端的に説明するのはなかなか難しいので、写真とともにごらんいただければ幸いです。

青い森鉄道のうち駅舎がある程度の規模の駅、すなわち駅の開設当初から無人駅だった駅を除いた駅では、跨線橋が設けられており、ここから駅の全体を見ることができます。ここ陸奥市川も同様ですが、ぱっと見たところ、いささかの違和感を抱く人が多いと思います。それは、配線が単純であるにもかかわらず、駅の横幅が非常に広い点です。駅本屋前のホームが非常に広く、島式ホームも非常に広い。特急停車駅でもここまでのスペースを取っているだろうか、と思わせるぐらいの規模なのです。

中線は撤去されています

陸奥市川駅下りホーム
【写真2】陸奥市川駅下りホーム。木造のしっかりした待合室があります。《2012年11月18日撮影》

下りホームはもともと島式でしたが、例によって中線は撤去されており、外側線のみを使う片面ホームになっています。跨線橋のステップは、青い森鉄道のコーポレートカラーである水色に塗られています。

ガラスを多用した待合室

上りホームから青森方を望む
【写真3】上りホームから青森方を望む。《2012年11月18日撮影》

ホームの中ほどに、木造のしっかりした待合室が設けられています。一見、どうということもない木造待合室ですが、妻面にガラス窓が配置され、採光がよくなっている点が目を引きます。下見板貼りというクラシックな外壁に似合わず、ガラスを多用したモダンなデザイン。これが意外と合っているから面白いものです。全国的にもあまり例のないタイプの建物でしょう。

特に上りホームの幅が広い

陸奥市川駅上りホーム
【写真4】陸奥市川駅上りホーム。これもホーム幅がずいぶん広く取られています。《2012年11月18日撮影》

さらに、上りホームの広さは尋常ではありません。広さというより、列車の乗り場から駅舎までの間が非常に遠い、というべきでしょうか。これは写真をご覧いただくしかないのですが、ホームの上で車座になってもあまり迷惑にならないだろう程度の広さがあるのです。その気になれば、島式ホーム2面4線にすることも十分できそうです。

駅舎はホームへせり出すように

陸奥市川駅駅舎をホーム側より望む
【写真5】陸奥市川駅駅舎をホーム側より望む。車寄せのような軒がホーム側にせり出しています。《2012年11月18日撮影》

それでは肝心の駅舎はというと、ホーム側から見ただけでぎょっとします。なにせ、まるで車寄せのように軒がホーム側にせり出しているのです。国鉄標準型の駅としては、例えば隣接する下田駅のように、駅舎全体を囲む軒がホーム側にも回っているケースはありますが、わざわざホーム側に設けている例は珍しいといえます。もちろん、ホーム幅全体をカバーするように上屋を設けるケースは珍しくも何ともありませんが、この駅では改札口を抜けてすぐの部分のみにあるわけで、やはり特異な存在です。

木造ではありますが、断面が台形となっている直線的な駅舎そのものも印象的です。ローカル駅の多くが横長になっているものですが、この陸奥市川駅はむしろ上へ上へと延びていきそうな、そんな印象を与えます。

駅舎内は居心地のよい空間に

陸奥市川駅駅舎内
【写真6】陸奥市川駅駅舎内。地元のボランティアによるものか、清掃が行き届いていました。《2012年11月18日撮影》

駅は無人化され、自動券売機が設置されているのみですが、地元のボランティアによるものか、清掃が行き届いているほか、観葉植物などの手入れも行われており、非常に居心地のよい空間になっています。地元の住民や子供たちが気軽に立ち寄れる空間となっているようです。

正面に回るとストンと垂直な平面が

陸奥市川駅駅舎を北側より見る
【写真7】陸奥市川駅駅舎を北側より見る。かなり大柄です。《2012年11月18日撮影》

今となっては静かなローカル駅である陸奥市川に、このような立派な設備が設けられたのは、戦時中には軍部の要請、戦後はGHQの要請があったためです。現在は陸上自衛隊駐屯地や海上自衛隊飛行場として使われているスペースへの輸送拠点として位置づけられたため、重要な拠点駅となったものとされています。なお、GHQでは大柄な白い駅舎を見て「東北の白象」と称したそうですが、言い得て妙といえましょう。

駅前には民家が密集

陸奥市川駅駅前
【写真8】陸奥市川駅駅前。小商店があるほかは民家が集まっています。《2012年11月18日撮影》

駅前には小商店のほか、民家が密集しています。通勤通学利用がけっこうみられるようです。

停車列車 [2013年12月現在]

快速は基本的に通過します(上りの一部のみ停車)。

乗り場

東側(駅本屋側)から順に、1番線、3番線となります。2番線の設備は撤去されています。

  • 1.青い森鉄道線上り 八戸、目時方面
  • 3.青い森鉄道線下り 野辺地、青森方面

駅名の由来

確認中。

歴史

当初は信号場として設置されました。

1926年11月5日
尻内(現、八戸)一下田間に、轟(とどろき)信号場設置。
1944年10月11日
轟信号場が駅に昇格、陸奥市川駅開業。
1971年9月30日
この日かぎりで貨物営業廃止。
1987年4月1日
国鉄の分割民営化に伴い、JR東日本の駅となります。
2010年12月4日
東北新幹線新青森開業に伴い、JR東日本の八戸-青森間が青い森鉄道に移管され、同社の駅となります。

周辺の見どころ

確認中。

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