伊勢竹原を出ると、いよいよ雲出川に沿って山林を分け入っていくようになり、急勾配や急曲線にディーゼルカーが挑むようになります。峡谷ということばがふさわしい光景が車窓に見えるようになると、ほどなく伊勢鎌倉に到着します。
家城、伊勢竹原と、まとまった集落があった駅とは異なり、集落からかなり離れていることもあり、片面ホームのみで列車交換が可能だった痕跡もないという、きわめてシンプルな駅になっています。ホームは比較的広く、新しい待合室が整備されていますが、この待合室が浮いているように感じられました。古くからの駅ですが、そもそも駅舎があったかどうかもわかりません。
駅の周辺には数戸の住宅がありますが、すべて廃屋となっており、柱が折れて倒壊しているものもありました。日本有数の多雨地帯でもあり、メンテナンスされない木造建造物は、早い段階で自然に帰るのかもしれないなどと思ったものです。駅前の道路はあまり太くないながらもきれいに整備されており、自動車が頻繁に通るにもかかわらず、その道路の脇にある存在は無視されているようでした。