昨日は、地下鉄の延長開業があった名古屋まで往復したりして1日を費やしたのだが、今日も特にスケジュールを進める必要はない。いわば、息抜きの日と位置づけることにした。とりあえず今日は大阪に宿泊することにしているが、どう過ごすかはまったくの白紙である。近畿地方のローカル線乗りまくりとか、あるいは大阪のミナミを久々に歩くとか、育ちの地である阪神間に行ってみるとか、選択肢はいろいろある。
どうしようか考えながら、ひとまず山陰本線の太秦まで行く。列車に乗らないことには始まらない。
太秦では、改札口で初老の駅員が
「はぁー…、今どこ?」
と答える。
下り列車が到着すると、狭いホームは高校生でいっぱいになる。8両という長い編成に、大都市近郊電車であることを改めて実感する。先頭車は相当の混雑で、車内でメモを広げるのも難しいくらいだ。
高架線を上り、島式ホームの花園に到着する。駅の真下にある広場がきれいに整備されている。ここから先は、複線化工事や新駅設置工事やらと、工事現場の中をうにょうにょと進んでいく。
京都到着8時37分着。
新大阪までの区間は、東海道新幹線、在来線の東海道本線のいずれにも乗ることができる。急カーブを避けるためか、京都-新大阪は在来線よりも新幹線のほうが実際の距離は長く、したがって新幹線に乗るのも選択肢として有力だが、さすがに在来線とどちらにも乗れるのにあえて新幹線に乗りたくはない。そういうしだいで、東海道本線の下り快速電車に乗り換える。若干の立ち客が出る程度で、さほど混んではいない。
次の長岡京で下車する。長岡京は、この地にかつて都があったことから付けられた自治体名によるもので、“長岡京”なる地名があるわけではないのだが。この長岡京駅から歩いて30分ほどのところに、サントリーの京都ビール工場がある。ここには数回訪れたことがあるが、工場見学の最後にビールの試飲ができるのである。それが目当てで、今回も足を運ぶ。
いい気分になって長岡京に戻り、次の山崎ですぐ下車する。駅前にある国宝の待庵にちらと目を引かれるが、ここは事前に予約を入れないと入れないので、今回もちょっとのぞき見するだけにとどまる。今度はサントリー山崎蒸留所に向かい、ウイスキーを飲む。「山崎」のほか「響」なども味わうことができた。余市といい山崎といい、飲めるところで飲んでいるといった感じで意地汚いことこのうえない。品性の卑しさを自覚するのは酔いが覚めてからなのだが、これ以降のことは、新大阪までよく覚えていない。ただ、山崎の改札を入るときに
「途中下車か?」
「いえ、もう捺してもろとります」
「あ…そか」
と、なごやかなやり取りをしたことだけはしっかり覚えている。「最長片道」を実行しているという気概だけは残っていたようだ。
新大阪からは地下鉄に乗り換え、緑地公園に行ってユースホステルに投宿した。結局、飲むだけの1日であった。