気品を感じさせる名駅舎は閑職に

日光

にっこう
Nikkō
日光駅
日光駅駅舎。2010年5月3日

かつては長距離列車も発着

日光駅ホームに停車中の日光線列車
写真1日光駅ホームに停車中の日光線列車。1994年8月23日

国際的な観光地である日光の玄関口として設けられた駅です。

相対式ホーム2面2線から成り、両ホームは宇都宮方にある跨線橋で結ばれていますが、優等列車や長距離列車が皆無になった現在では、駅本屋前のホームだけで用が足りているようです。

現在も団体利用あり

日光線1番線ホーム
写真2日光線1番線ホーム。1994年8月23日

駅本屋のある1番線ホームに面して団体用改札口が設けられており、現在でも団体需要が一定数存在しているようです。

駅舎内はレトロ調

日光駅改札口
写真3日光駅改札口。2020年1月25日

駅舎内は、観光客を意識してブラウンカラーを基調としたレトロ調のカラーリングになっており、案内文字も明朝体に近いフォントを用いています。

かつては改札機もレトロカラー

日光駅に設置されている自動改札機
写真4日光駅に設置されている自動改札機。2010年5月3日

かつては自動改札機までレトロカラーになっていましたが、その後の機械更新に際して、ごく普通のカラーリングのものになりました。

コンコースにもメリハリ

日光駅コンコース
写真5日光駅コンコース。2010年5月3日

駅舎内は、床面がオーソドックスなコンクリートブロックで、壁面がしっくい調のアイボリー、木面をダークブラウンに統一しています。この結果、明るいところでは明るさが、暗いところでは暗さが強調されるようになっています。一時は駅員の制服も独自のものが使われていましたが、これも変更されたようです。

かつては、東京方面との間をデラックス車両を用いた準急列車が爆走し、日光駅の立地条件および距離の双方で劣る東武と互角の競争を展開していた時期もありましたが、現在の日光線は普通列車のみの運転で、大半が線内完結の、純然たるローカル線になっています。東北新幹線に直結しているとはいえ、東京方面からの観光輸送は東武へその役割を完全に譲る格好になっています。それでも、外国人観光客を意識して、各所に英語の案内表記が見られます。

「みどりの窓口」が営業

日光駅きっぷ売り場
写真6日光駅きっぷ売り場。2020年1月25日

観光客の利用が一定数見込まれるためでしょう、日光線単独駅で唯一「みどりの窓口」が残っている他、自動券売機も設置されています。

壁面には各種案内

日光駅のコンコースに設置されている各種案内
写真7日光駅のコンコースに設置されている各種案内。2020年1月25日

コンコースの壁面には、各種案内が設置されていました。

2階はギャラリーとして利用

日光駅2階への階段
写真8日光駅2階への階段。2020年1月25日

意匠の美しさだけではなく、皇族の利用に備えて、貴賓室や一等待合室も設けられるなど、毛並みの良い駅としては全国でも指折りの存在です。玄関部分など、開口部がゆったりと取られてはいるものの、窓の配置が採光面であまりいかされていないこともあり、駅舎内部がやや暗いのが残念。駅の天井には「鳴き龍」があり、その下で手を叩くと音を発します。

駅舎2階には、かつて一等車利用者専用待合室「ホワイトルーム」として使われていたスペースが、ギャラリーとして利用されています。

りりしさを感じさせるデザイン

日光駅玄関
写真9日光駅玄関。2020年1月25日

ハーフティンバーにドーマー窓を配した現在の駅舎は、1912年に建てられた二代目のもので、木造2階建て、鉄道院技師の明石虎雄の手によるものです。ネオ・ルネサンス様式のまことに優雅なもので、屋根の造形に見られる優雅なデザインは、ほかに例のないものです。“貴婦人のよう”と形容された説明文を数個所で見ましたが、私はむしろ、背筋をピンと伸ばした紳士らしいりりしさを感じます。

優雅な駅舎が正面を向きます

日光駅駅舎正面
写真10日光駅駅舎正面。2010年5月3日

スレートの瓦を葺いた寄棟屋根など、日光東照宮の存在も奥日光高原の存在もあえて無視しているものですが、時代を超えた美しさを誇る、純然たる洋風駅舎です。

観光地の駅舎としては、現在は路線が廃止されてしまった大社駅(国指定重要文化財)――こちらは12年も時代が下るので単純な比較は無意味ですが――とともに、最高峰の存在です。これはまた、大正時代、日光という観光地の存在がきわめて大きかったことを物語っているともいえましょう。

西側に団体待合用スペース

日光駅駅舎西側
写真11日光駅駅舎西側。2020年1月25日

駅舎西側には団体待合用スペースがあり、その先にトイレが設けられています。。

駅前は比較的静か

日光駅駅舎東側
写真12日光駅駅舎東側。2020年1月25日

駅舎の東側には、駅長室の看板を掲げた事務所用スペースがあります。

ロケーションでみても、東武日光駅よりも坂を下った場所に位置しているうえ、駅舎自体が相対的に小さいこともあり、目立たないのが残念。しかし、軽快さと繊細さを併せ持ち、社会的地位が高い人の利用を想定した上品な駅舎は、そんな環境だからこそ生きながらえてきたのかもしれません。

乗り場

駅本屋側(南側)から順に1番線、2番線となります。

  • 1-2.日光線上り 鹿沼、宇都宮方面

歴史

1890年8月、日本鉄道の手によって開業しました。1906年に国有化されたのち、1912年に現在の優美な駅舎が完成しています。1929年に、東武日光がさらに東照宮に近い位置に開業し、浅草から直通列車を走らせると、国鉄は完全に守勢に立ちます。しかし戦後になると、国鉄日光駅にもハイグレードな準急列車が出入りするようになります。上野ではなく東京発着の便を増発するなど、国鉄の攻勢はめざましいもので、日光駅も多くの観光客でにぎわったといいます。しかし、スピードでは東武にかなわなかったことに加え、日光宇都宮道路の開通による乗客減などもあり、すっかりローカル駅となり、現在にいたっています。

かつては、貨物列車が設定されており、東武日光駅との間に並ぶ古河鉱業の倉庫からアルミニウムを搬出していましたが、これも1984年1月末かぎりで廃止されています。

略年表(クリックまたはタップで開閉)
1890年(明治23年)8月1日
日本鉄道により今市-日光が開通、日光駅開業。
1906年(明治39年)11月1日
日本鉄道が国有化され、国有鉄道(逓信省鉄道作業局)の駅となります。
1912年(明治45年)
現駅舎供用開始。
1984年(昭和59年)1月31日
この日限りで貨物営業廃止。
1987年(昭和62年)4月1日
国鉄の分割民営化に伴い、JR東日本の駅となります。
2009年(平成21年)4月16日
レトロ調への改装工事完成。

駅周辺

確認中。

近隣の見どころ

確認中。

その他

  • 第1回「関東の駅百選」(運輸省関東運輸局)選定駅。
  • 経済産業省、日光駅を「近代化産業遺産群33」を構成する産業遺産として認定。[2007年11月30日発表]
  • 日光駅駅舎を国の登録有形文化財と説明しているWebサイトが散見されますが、文化庁の「国指定文化財等データベース」には登録されていません。

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